新卒カードを捨てた
まずは懺悔します。
俺は幼稚園3年、小学校6年、中学校3年、高校3年、大学4年と累積19年も親が学費を支払って買った「新卒カード」を無駄にし、2年経たずして退職しました。
申し訳ございませんでした。
会社を辞めた時はさぞかし親はガッカリしたことでしょう。
でも、無理でした。
この記事では、新卒カードを無駄に捨てるまでの経緯と、どうやってそこから取り戻したかを説明したいと思う。
証券会社に入社した
証券会社を選んだ理由
大学ではマーケティングの勉強をゴリゴリやっていたので、将来はマーケっぽい仕事をするもんだと思っていた。
ところが、残念ながら行きたかったゼミに落ちてしまって、考えが揺らいだ。
別にゼミに入れなかったからってその道が断たれる訳ではないのだけれども、インターンとかもやってる中で自分がビジネスを「数字で語れない」というのがどうも情けないと思ったので、なんとなく証券会社を受けた。
中でも、その会社を選んだ理由は下記の通りだ。
- 投資・財務経理系の勉強はしてこなかったので、相対的に専門性が低そうなリテールからスタートが良いと思ったから
- インターンで営業成績が良かったので、営業が向いていると思ったから
- ノルマもないとのことなので、じっくり成長して行けると思ったから
入ってみてどうだったか
まず、選んだ理由に対して実際はどうだったかと言うと、
- 確かに専門性は低かったが、それが逆にネックで10年後も同じことしている未来が見えた
- インターンの営業で成績が良かったのは商材に心から共感していたからで、証券会社で売るべき商品の中には共感できないものも複数あって、全然売れなくて向いていなかった
- ノルマはないとのことであったが、目標という名のノルマがあった
残念ながら売っているものが良いと思えず、全然売れなかった。
「何を売っても良い」っていう前提はあるものの、投資信託とか債券なんかは在庫モノなのでどうしても支店の割当を担当者全体で分担して捌かないといけない。
例えば、一般的な投資信託は買う時に3%くらい手数料抜いて、管理手数料も毎年2%くらい抜くので初年度は5%も手数料を払う。
そもそも中長期で持たせる予定で売るのだが、新規の顧客もなかなか取れるものではない。
先輩方は当然のように同じ顧客に買わせては売らせてを繰り返していて、客はその度に手数料を抜かれて、どんどん資産を減らしていく。
これが当たり前になってる感覚に引いた。
これができてしまうのは、下記のどれかの理由によるだろう。
- 客をオモチャだと思っている
- 構造に気付かず売っている
- 本気で商品を信じていて、どれだけ手数料を抜いてもいずれは勝てると本気で信じている
俺はどれにも当てはまらず、こういうのはやりたくないのでやらなかった。
でもノルマはこなさないといけないから、コレはこの先よっぽど出来る人以外はジリ貧だなって思った。
そうすると、やっぱりどんどん成績が遅れていく。
暫くすると、当然なんとなく居づらい雰囲気になってきた。
一方で、ビジネスを数字で語れるようになる目的で入社したので、四季報で色んな企業の財務数値を覚えたり、研修資料を読んで資本市場の構造の基礎を学習したりしていた。また、帰宅後や休日にFP技能士とか証券アナリスト検定とか色々勉強していた。
ただ、
「仕事で結果出してないのにそんなことしてもね・・・」
って雰囲気にやっぱりなる訳だ。
コレはもう方向性が合わないし、支店長直下の役職まで俺と同じ仕事しているから、この先ずっと同じことするんだろうし、もう無理だなって思った。
売らなくて申し訳ないし、辞めようって思って転職サイトに登録した。
証券会社を退社した
転職は難航
転職サイトに登録したのは良いが、転職は難しかった。
今でこそ「第二新卒」という道が開けているが、当時は今ほどではなかったし、リーマンショック後の不況であったこともあり、「営業マン」だった俺にエージェント経由で引く手があったのが他の証券会社や生保・損保の営業職だった。
環境や売るものは多少変わるのかもしれないが、結局今と何も変わらず、全く転職する意味が無いので全て断った。
社内で本部異動も試みたが、景気が悪くて逆に本部から支店営業マンに流れてくる状況で、成果も出していない俺が本部異動なんてあり得なかった。
とりあえず会計士になることにした
これでは辞めるに辞められず、困ってしまった。
日々、帰り道にある書店に立ち寄っては、転職や資格のコーナーの本を手にとってパラパラとめくった。
そんな中で、たまたまエール出版の「私の公認会計士試験合格作戦」に高校の同級生が載っているのを見つけた。
これを読んで会計士を受けることを決意した。
理由は、
- 同じ高校の同級生が合格しているなら、俺でもできると思った
- ビジネスを数字で語れるようになりたいという目標に近づけると思った
- 監査法人に就職すれば、失敗したこのキャリアもリセットできそうだと思った
経営・会計・投資・財務・法令の勉強を幅広く出来そうで、大学時代にちゃんと勉強しなかった後悔もあるし、丁度良い卒業試験だなってくらいの認識で会計士を取って転職することにした。
公認会計士資格に救われた
敗者復活には最高のツール
退職し、翌年会計士試験に受かると監査法人に就職した。
大学卒業時は22歳、証券会社には2年弱在籍していたので辞めるときには24歳になっていた。25歳で論文式に合格し、監査法人入社時には26歳になっていた。
つまり、新卒から4年遅れてしまったわけだ。
これは結構痛いなと思ったけど、今更どうしようもない。
むしろ、新卒カードを誤って捨ててしまった身としては、キャリアがリセットされて良い金額の給与がもらえているということがもう素晴らしすぎて嬉しかった。
この仕事でこんなにカネが貰えるんですか!?と驚いたものだ(笑)。
実は典型的なキャリア転換のルート
面白いことに、証券会社時代に同期で、監査法人でも同期になった奴がいる。
証券会社時代に先輩・後輩で、監査法人でも先輩・後輩の奴もいる。
Big4を回れば、同じ証券会社出身者がそこら中にいるのだ。
要は、リテール営業マンから会計士というルートは、決して俺が見つけた特別なルートではなくて、「よくある」キャリア転換ということだ。
世の中には証券会社で仕事をしていて、同じようなことを思って、同じようなプロセスで考えて、同じ道を選ぶ人がたくさん存在している。
また、証券会社のみならず、銀行のリテール営業マンもちらほら見かけるので、彼らも同じようなものなのだろう。
俺は今はいわゆるFAS業務をしているのだけれども、こういうアドバイザリー・コンサル業界にもそういう人は流れ着いていて、前職が銀行・証券リテールの人は少なくない。
純粋なリテール経験だけの人が無資格で潜り込んでくるのは難しいけれど、本部異動を噛ませたりUSCPAを取ったりして流れ着いてきている。
そして、ちょっと話したりするとリテール時代の話で盛り上がる(笑)
そして、ほぼ同じことを思っている。
まとめ
証券リテールにやりがいを感じている人もいるだろうし、そういう人を否定するつもりは毛頭ない。
ただ、リテール業務はやっていることがどうあれ、自分の仕事を信じた上で本気でコミットできる人でないと続けることは難しいので、入社してみたもののやっぱり違った!って人はマジでツラい日々を送っていることだと思う。
そんな人が、仕事を辞めるための会計士試験っていう手段はアリだと思うので、もし悩んでいたら一つの選択肢として検討してみてほしい。
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