この記事の目的
紙の本の良さを残したPDFを作成し、さらに紙の本を超える利便性を持った電子書籍を作成・利用する方法をシェアすること。
※ゴハンの自炊の記事ではないので注意‼︎
絶対に自炊したほうがいい
電子書籍と言われると未だに拒否反応を示す人が少なくない。
かなり昔から「電子書籍」や「自炊」という言葉を耳にするが、一向に紙の本がなくなる気配はない。
AmazonのKindleの歴史を辿ると2007年には存在していたので、10年以上前から電子化は実現していたにもかかわらずだ。
漫画や雑誌は「読みっぱなし」なので電子化がかなり進み、電子書籍で読む人も多い一方で、専門書や参考書を電子書籍で読む人は未だに少ないのだ。
どうしてこれほどに電子書籍の普及が進まないのか。
それは、Kindleをはじめとした事業者が提供する電子書籍のサービスが紙の本より不便だからである。
ただし、事業者の提供するサービスが紙の本より不便というだけで、自炊により電子化した書籍は紙の本よりめちゃくちゃ便利なのである。自炊した電子書籍はものすごく革新的な機能を持っているので、絶対に自炊した方が良い。
自炊することでどれだけ人生が変わるのかという点については下記のnoteに記載したので参考にしてほしい。
用意するもの
DURODEX 自炊裁断機 200DX
切れ味が断然違うため、失敗して本をダメにしてしまうことがない。
また、18mmまで裁断可能なので下処理も少なくて済む。
さらに、赤色LEDでカットラインを表示することができるので、正確な処理ができる。
価格はそこそこ高いが、現状はこれ一択というところだろう。
ScanSnap iX1500
タッチパネル搭載、Bluetooth接続なので、スキャン対象を流し込んでワンタッチでスキャンが完了する手早さが最高。
また、PDF編集ソフトとしてKofax Power PDF Standardがバンドル(同梱)されており、Adobe Acrobatには匹敵しないものの、自炊に必要な機能は網羅した製品である。
これ一台あれば、裁断後の本・書類から効率的にPDFを生成することができる。
iPad Pro
自炊した電子書籍を利用するために必要であり、紙の本よりも便利に扱うためにはApple Pencilとセットで用意する必要がある。
Apple Pencilについては第1世代と第2世代で性能が大きく違うので、第2世代を使えるiPad Proがオススメだ。
Apple Pencil(第2世代)
第1世代はキャップ付きで本体に差して充電するタイプであるが、キャップが外れやすく紛失しがちなのと、本体に差して充電するのはあまりにも使い勝手が悪い。また、収納できないため保管も面倒だ。
一方で第2世代はキャップがなくてiPad Proの上部にマグネットで張り付き、そこで充電できるというその不便さが全て改良されており、圧倒的に第2世代の方が良い。
用意するものの優先度
- iPad Pro
- Apple Pencil(第2世代)
- ScanSnap iX1500
- DURODEX 自炊裁断機 200DX
上記の順番で購入すると良い。
まず、自炊した電子書籍を利用するための媒体がなければ話にならないので、iPad Proが最も必要だ。また、紙のように扱うためにはApple Pencil(第2世代)も必要だ。
ここまでは揃えたいところである。
裁断機とスキャナーは持っていなければ外注する選択肢がある。都度コストがかかるが、これらを購入するまでかどうかを判断するためにも最初は外注から始めるのも良いだろう。
低コストで裁断・スキャンを実施する方法は下記リンクを参照してほしい。
裁断してみよう!
まずはdurodexを使ってみよう。
使用しないときはこのように立ててコンパクトに収納できる。
まずはdurodexを寝かせる。
そして、背面に収納されている「受け木」を取り出す。受け木というのは裁断の際に刃を受けるものだ。
受け技を刃の下に挿入する。
18mm以下の薄い本ならばそのまま切れるが、このような厚い本は刃の下に通らないので、下処理が必要になる。
本をめくり上げ、18mm以下の単位に区切る。
カッターで割く。
こんな感じで、半分になった。
これを刃の下に挿入する。
バラバラになった。
もう一つの束も切ると、このように全てバラバラになる。
以上で裁断のフェーズは完了だ。ここまで5分くらい。
スキャンしてみよう!
次に、scansnapを使ってスキャンしよう。
裁断した原稿をscansnapの挿入口に置ける単位に区切って設置し、Scanボタンを押す。
最後に表紙もスキャンしておこう。
※後述するが、原本の表紙に特段のこだわりがない場合は表紙はスキャンせずにAmazonのWebサイト上の写真を利用したほうが圧倒的にキレイに表紙画像を挿入できるので、そちらをオススメする。
以上でスキャンのフェーズが完了だ。原稿の量にもよるが、分厚い本でも10分くらいくらいあれば完了する。
編集してみよう!
スキャンしたファイルを結合しよう
スキャンしたデータはBluetoothで自動的にPCに飛ぶので、ScanSnapHomeという専用ソフトを開くとスキャンした原稿が並んでいる。
表紙の折り返し部分はいらないので削除しておこう。
続いて、scansnapにバンドルされているKofax Power PDF Standardを開き、ホーム>作成>ファイルの結合から表紙を除いたページを結合させて読み込もう。
そうすると、いくつかの束に分けてスキャンした本がまとまる。
紙面の書籍と同じ見た目に調整しよう
仕上がりを見開き(実際の本のように左右のページを1画面に表示)にしたいので、2ページ単位で組になるように調整しよう。
この場合は、2ページ目に白紙を入れることで実際の本と同じ左右ページになる。
なお、先に設定で「白紙ページを自動的に削除します」をオフにしておけば、本の中の白紙ページが残るので、本の途中で白紙ページがあってそれが削除されることにより左右が合わなくなるという事態が避けられる。この設定はマストと言える。
見開きにするためにPDFで印刷しよう。紙に印刷するわけではなく、PDFからPDFを作るというイメージだ。この時に倍率を「1枚に複数ページを印刷」にして、ページ数を「2ページ」にしよう。
PDFに印刷すると、見開きで左右が組になったPDFが出来上がる。
向きがおかしいので、ホーム>ページ回転>左で直そう。
表紙を挿入しよう
次に、表紙を挿入しよう。ScanSnapHomeからドラッグアンドドロップで先頭ページに表紙をもってくれば完了する。
なお、表紙については元の書籍に忠実であることに対して特にこだわりがなければもっとキレイに取り込む方法がある。
Amazonで対象の書籍を検索し、表紙のイメージを表示・保存しよう。これを自らスキャンした表紙の代わりに挿入すると更に見栄えが良くなる。なお、筆者はこちらの方法を採用している。
OCR(文字認識)処理をして検索可能なPDFに変換する
続いて、OCR(文字認識)処理をしよう。OCR処理をすると本の中の文字を文字として認識するようになるので、検索ができるようになる。
これはとても大切で、紙の本よりも便利に利用するために必ずこの下処理をしよう。
ホーム>変換>検索可能なPDFの作成から実行する。
最適化してファイルサイズを小さくする
最後に、このままではファイルサイズが大きいので、PDFの最適化をしよう。
PDFの最適化を行なうと、見た目はほぼ変わらないまま大きくファイルサイズを落とすことができる。
ホーム>ツール>縮小から実行する。
結合後のファイルは173Mであったが、最適化実施後は88Mになった。
iPad Pro本体の容量やバックアップのためのDropboxなどの容量のことも考えてできるだけコンパクトなファイルサイズにしておくべきだ。
最後にiPad Proに転送しよう。MacユーザーならAirDropですぐに送れるが、WindowsユーザーであるならばGmailやデータ便などで転送しよう。
なお、更にオススメの方法としてクラウドストレージを利用した転送方法がある。pCloudであれば買い切り(サブスクリプション利用料なし)で一生ストレージが使えるので、興味があれば下記のリンクを参照してほしい。
分厚い本であったため、ここまでの編集作業はそこそこ時間がかかり、15分くらい要した。
ただしほとんどがOCR処理の待ち時間なので、スマホをいじりながら待っていればそんなにストレスも大きくない。
使ってみよう!
iPad Proに転送したら、Noteshelfで開こう。
Noteshelfは自炊したPDFを利用するのに最適なアプリで、詳しくは下記リンク先を参照してほしい。
Noteshelfにインポートした。
OCR処理をしておいたので、自由に検索できる。例えば「IBM」で調べると、IBMの単語が含まれたページが右端に列挙される。
「紙のように使える」と言っていることに対する説明になるが、Apple Pencilでこのように自由にマーカーを引くことができる。曲がった線は自動的に補正される。
もちろん、紙の書籍とは違って自由に消すこともできる。
また、紙のようにフリーハンドで書き込みをすることができる。
これも、もちろん自由に消すこともできる。
このように、紙の本と同様に書き込んだりマーカーを引いたりできるので、紙の本の良さを全く失っていないことがお分かりになられただろうか。
さらに、OCR処理のお陰で検索もできるので、紙の本と違って目次を見てペラペラめくって探す必要もない。
なお、ページとページの間に新規ページを追加することもできるので、本の内容が網羅していない内容を追加することもできる。
まとめ
いかがだっただろうか。
自炊により電子化した書籍は紙の本よりめちゃくちゃ便利
というのを実感してもらえただろうか。
自由に書き込みができるという紙の本の良さを維持しながら、検索機能も使えるので紙の本よりも優れたPDFファイルが出来上がる。
また、面倒なライセンスに縛られた電子書籍と違って、好きなアプリケーションで開けるし、PCやスマホなど自分の所有する他の媒体に転送することも自由だ。
これが自炊によって電子化した書籍の便利さなのである。
想定される役立つシーン
例えば筆者の場合、自炊した電子書籍をどう活用しているのかを紹介しよう。
筆者は公認会計士という仕事をしていた。この仕事では、財務諸表や基礎資料の閲覧、クライアントからの相談など色々な原因により突発的に会計論点にかかる議論が発生する。
困るのは、「どの論点が突然湧き上がるかわからない」点だ。
会計論点は非常に幅が広く、公認会計士としての経験が深い人でも網羅的に理解しきっている人はいない。そのため、都度「調べる」という作業が発生するのだ。
条文に書いてある範疇の議論は、しばしば「会計監査六法の閲覧」や「周囲の人間への相談」、「専門書の閲覧」で解決する。
会計監査六法は非常に分厚く、中身も条文として順に並んでいるため非常に調べにくい。また、周囲の人間も割と知らないことが多いし、専門書も分厚いため日常的に持ち運ぶこともないから持ち合わせている可能性は低く、事務所に戻って図書室で探すというパターンが多い。
ここで、例えばQ&A形式の専門書を自炊しておくと、一瞬で正解を導いたり、当たりをつけたりすることができる。
例えば繰越外国税額控除の税効果ってどうすんだっけ?ってなったとしたら、たまたま税効果関連の持ち歩いている人がチームにいなくても、六法でわざわざ調べることもなく、さっとNoteshelfを開いて「繰越外国税額控除」で検索するだけで一瞬で答えがわかる。
「ちょっとよくわからないけど、今は手を動かさないといけないし、一回事務所に持ち帰りましょうか?」
みたいな話がなくなる。こんな感じで、時短ツールとして有効だ。
各業界・教育機関でも活用できるシーンは多いと思うので、ぜひ工夫して活用してみてほしい。
コメント