試験は超簡単だけれども、民間資格でありながらも持っていない人は証券会社で営業(電話応対すら)することができないという有用性があったり、何も知らない人に対して「証券」という名称が何となく知性を感じさせるので保有資格欄が映えるというなんちゃって効果もあったりするコスパの良い資格である証券外務員について紹介する。
合格体験記
受験時のステータス
まずは筆者がどのような前提でどのように合格に至ったかを紹介する。
受験時の年齢:20代前半
勉強期間:1〜2週間程度
勉強時間:10時間前後
学習方法:参考書
前提知識:大学で基礎理論の単位を取ったくらい
特に簡単な部類の資格であるため、かなりの短期間・短時間で合格している。
2週間と書いているものの、必要な時間が確保できれば1週間でも十分だし、多少の前提知識のある人ならば一夜漬けでも合格可能性がある程度の印象だ。
受験の動機
筆者は大学時代にマーケティング論を中心に学習していたが、ゼミ面接で落選して金融論のゼミに所属していた。
ただ、やりたかった事と違うことをやらされていることに対する不満と、当時金融論にそこまで興味がなかったので数ヶ月であっさりと辞めてしまった。
とは言え、その数ヶ月を踏まえて少しは金融業界に対する理解も進み、証券会社に入社する可能性があった(実際、この後に新卒採用で証券会社に就職することになる)。
ただ、ゼミを辞めてしまう程度の興味しかなかったので、耐性を確認する目的と、就活向けに履歴書の資格欄の穴を埋める目的で証券会社の入門資格である証券外務員試験を受験することにした。
証券外務員資格試験とは?
どんな試験?
日本証券業協会が実施する資格試験制度で、CBT(コンピュータ試験)にて行われる。
民間資格であるが、この資格を持っていないと証券会社で営業活動ができないので、国家資格に近い位置付けとも言える資格である。
CBT試験であるため、自分の都合で試験日を設定できることから、ちょっとヒマになってしまった時に資格欄を1列埋めることができるというメリットがある。
どんな人が受けるの?
受験者データが開示されていないため不明であるが、外務員になる以外に使い道もないので、ほとんどが証券会社に内定・就職した人が外務員として活動する目的で取得しているものと考えられる。
なお、受験資格はないため誰でも受験可能だ。
筆者が証券会社に入社した時点で事前に証券外務員試験に合格済であったのは研修で一緒だった40人くらいの集団で2、3人だった。
とは言え、簡単な試験であるため事前に取得したところで同期に差をつけるようなことにはならない。
ただ、宅建などの何名のうち何名が在籍しなくてはならないという類の資格と違ってこの資格を持っていないと支店に配属できないため、落ちた人はめちゃくちゃ怒られていた。そういうプレッシャーを逃れるために事前を保険をかけるという意味ではメリットかもしれない。
一種・二種とは?
一種の方が二種よりも上位の資格である。一種合格者が取り扱いできる金融商品の幅は二種合格者よりも広い。
かつては一種試験については受験資格があったが、平成24年(2012年)から誰でも受験することができるようになっている。
筆者は2008年に証券会社に入社しているので、旧制度下で受験を行なっているため、入社前に受験できたのは二種試験だけであり、入社後に一種試験に合格した。
合格率
証券業協会が発表している2018年のデータでは下記のとおりである。
試験種類 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
一種 | 4,782 | 3,160 | 66.1% |
二種 | 3,870 | 2,573 | 66.5% |
金融機関のリテール業務担当は頭の良さで選ばれているわけではないので、勉強が苦手な人も大勢おり、母集団のレベルは低い。
その中で66%の合格率ということはかなり高い合格率であることがわかる。
つまり、誰でも合格することができる試験なのである。
それもそのはずで、証券外務員は持っていないと電話一本取れないので、受かる試験なのである。宅建士であれば持っていなくても不動産営業ができるが、証券外務員の場合は何もできないので合格できないという選択肢はあり得ないのだ。
証券会社が無資格者を無差別に採用することからも、合格は当然するものという前提なのである。
リテールは勉強が苦手な人が多いって本当なの?
あくまでも筆者の周囲を見た限りでの私見だが、筆者は金融業界はよっぽど頭の良い人が集まっているものと思っていたが、リテールはそうではなく、むしろ勉強が苦手な人が多い印象だった。
もちろん資格が仕事の能力を測るべき指標とはならないが、専門家として最低限の知識を身に着けようとする姿勢は、顧客に対するマナーであり、責任感やホスピタリティの精神の現れであろう。
専門性の高い領域においては必然的に求められる姿勢である。
ちなみにこの業界には証券アナリストとCFP(一級FP技能士)というスタンダード資格がある。
前者は本部で投資を行なっているような人が中心に取得し、後者は支店で対個人・未上場法人にコンサルティングを行うような人が中心に取得している。前者の方が高度な数学的な内容を含むため、難易度が高い。
どちらも数百時間で合格するような基本レベルの資格であるが、リテールでホルダーを見かけることはほとんどなかった。
更に言うと、筆者の在籍していた支店でどちらの資格も支店長含め保有者はゼロだった。
本部は上記の両資格を取得推奨資格としていたので、目指す風土はあった。
しかし、如何せん能力が足りない。
ベテラン上司が意気込んで受けに行ったCFPの課目に落ちた話なんて残念過ぎて返す言葉もなかった。
そのようなレベル感を受けてのことか、昇進の必須要件も二級FP技能士までとされていた。
しばしば証券リテールの営業員は「ソルジャー」と呼ばれるが、上記のような背景からもまさにそうだと思った。
どうやって勉強するか
市販の参考書で十分
真正面から挑むとするならば、「証券外務員必携」を使って勉強する事となる。
これは日本証券業協会が発行している書籍で、詳細に記載されているものの、外務員必携は抑揚がなく何が大切なのか非常に分かりづらい。
とりあえず試験に合格したいという人は一般書籍の参考書を利用した方が効率的だろう。
筆者もこのシリーズを使って合格した。テキストの厚みもそれほどないので、サクッと読み切れるだろう。
資格試験共通の作法として、テキストを読むよりも問題を解く方が圧倒的に重要なので、どんどん問題を解くようにしよう。
それでも難しい人はどうする?
一般的には超簡単と言えども、「人生でほぼ何も勉強してこなくて何も頭に入ってこないです!」という人も中にはいるだろう。
そういう人は証券会社に就職するのはやめたほうがいいだろう。
この最低レベルの知識の習得が難しいようであれば、入社後適応できない可能性が高いからだ。
小難しいことを知らなくても商品が売れれば良い世界ではあるが、コミュニケーションを取る上で必要となる知識の最低限度はある。
無理して自分に合わないことをやるよりも、自分の得意なことをやったほうが幸せになれる可能性は高いだろう。
それでもどうしてもやってみたいんだという人は例えば通信講座を利用してみるのも良い手段だろう。
格安のeラーニング講座が用意されているので、探してみてほしい。
合格とその後
テストは当時は高田馬場にあったプロメトリックで受験した。
テストが終わり、部屋から出るとすぐに受付のお姉さんが古びたプリンターから普通紙に印刷された何かを持ってきて、内容を見るとそれが合格証だった。
何故か合格証には「合格」という文字はなく、「70%以上の得点だったぞ。この紙をなくすなよ。」と書かれた残念なもので、ちっとも嬉しくなかった記憶がある。
清々しいほどにこの試験の「程度」を感じさせてもらった。
資格の使い道
筆者は合格後に証券会社に入社することになり、実際に外務員として2年弱活動を行うことになった。
前述のとおり、リテール従業員は持っていて当然の資格で、入社後でも研修を受けながら十分に取得可能であるので、周囲と差をつける目的で事前に取得する意味はない。
ただし、筆者のようにこの業界に対する適性を判断するとか、就活に際して履歴書の資格欄の空欄を埋めるという意味では意義がある。
投資する金銭・時間ともに低コストで受験ができるので将来に悩んでいる暇な大学生や、転職を考えている社会人で少し時間が取れるような人はチャレンジしてみてももの良いだろう。
また、証券外務員資格保有者しか外務員業務ができないために、一般的なアルバイトよりも高単価のコールセンターのアルバイト案件が多数転がっているので、割の良いバイトとして申し込むのも良いし、証券会社に就職を考えている人は事前勉強として申し込むのも良いだろう。
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