公認会計士試験を理解し、短期間で合格するためのノウハウをシェアする
注意点
「簡単」というのは決してあまり勉強しないで合格できると言っているのではなく、勉強量は莫大でしんどいけれども、勉強内容としては難しくないということを指している点に留意してほしい。
会計士って経理の人のことでしょ?
経理の人のことでもレジの人のことでもないっスね・・・
じゃあ、お会計で多めに払ってくれる人のことかな・・・
だったら俺はベテラン会計士だな!
合格体験記
まずは筆者がどのような前提でどのように合格に至ったかを紹介する。
受験時の年齢:20代前半
勉強期間:1.5年ちょい
勉強時間:3,700時間前後
学習方法:予備校通学
前提知識:簿記3級未満の基礎学習
受験の動機は、前職の会社を辞めるため。
前職は証券会社の営業マンだったが、売り物に全く共感できなくてやる気が起きなかった。
このままでは食っていけないので、そこそこ勉強の適性はありそうだし、食うための資格として取ろうと思った。
また、大学では卒論も書かずに遊んでいたので、卒業試験も兼ねてという位置付けと考えて目指すことにした。
公認会計士試験とは?
どんな試験?
公認会計士・監査審査会が毎年実施している試験で、まずは短答式試験(一次試験でマークシート式)に合格し、次に論文式試験(二次試験で論文・記述式)に合格することで最終的な合格となる。
いわゆる「会計士試験に受かった」という状態は、この状態を言う。
但し、公認会計士として登録するためには論文式試験合格後に実務経験と実務補習所の修了と修了考査の合格が必要となる。
また、受験資格はないので、誰でも受験可能だ。
この点は非常に素晴らしい。
不器用な人でも一発逆転するような方法はあまり存在しない中で、今までの勉強やキャリアは不問で、誰でもそこそこの年収が約束されている職業に就けるチャンスがあるということは非常にありがたいことだ。
どんな人が受けるの?
前述の通り学歴などの受験資格はなく、誰でも受験できる。
そのため、合格者には大卒のみならず高卒・専門卒もいるし、東大卒などの超高学歴もいる。
ただ、事実として受験層の中心は高学歴の中間層的な早慶MARCH(早稲田大学・慶應大学・明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)卒が妙に多いという傾向がある。
とは言え、決してこの水準に満たない学歴であっても気負うことはない。
愚直に勉強を重ねれば誰でも合格することができる。
なぜこのような偏りがあるかについては筆者の私見ではあるが、後述する通り必要な勉強量が莫大でしんどいので、あまりにも勉強が苦手だったり勉強にモチベーションもない人は目指さないだろうし、逆に超高学歴層にしてみればもっと他に良い道がたくさんあるからだろう。
合格率
合格率は概ね10%程度である。
が、過去の推移を見ると結構酷い動き方をしている。
大手資格予備校のサイトのここ数年の合格率を見ると、合格率は安定的に見えるが、もう少し遡って見てみよう。
論文式試験の合格者は、
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/公認会計士試験
2014年度は、1,076人。合格率は10.0%。
2013年度は、1,149人。合格率は8.8%。
2012年度は、1,301人。合格率は7.4%。
2011年度は、1,447人。合格率は6.4%。
2010年度は、1,923人。合格率は7.6%。
2009年度は、1,916人。合格率は9.4%。
2008年度は、3,024人。合格率は15.3%
2007年度は、2,695人。合格率は14.8%
2006年度は、1,372人。合格率は8.4%。
おわかりいただけただろうか。
えっ?何がって?
2008年度は、3,024人。合格率は15.3%
2007年度は、2,695人。合格率は14.8%
という年がある一方で
2011年度は、1,447人。合格率は6.4%
という年があって、3倍近く合格率が違う。
流石にこれは酷くないだろうか?
そして、筆者は奇しくもその2011年試験に巻き込まれてしまったのであった。
筆者はは2011年の5月の短答式試験、8月の論文式試験に合格したのだが、5月の短答式試験の合格者は523人、合格率は3.4%という鬼畜っぷり。
しかし、マークシートの塗り具合バランス職人としての技能を鍛えた筆者は、実力を超えたパフォーマンスを発揮して3.4%の狭き門を突破することができた。
なお、逆に合格者数が大幅増加した2007年・2008年合格の人たちは「大量合格世代」とか、「ゼロナナ・ゼロハチ」呼ばれ、渋い思いをしている。
本来合格してはイケないレベルの人達が大量に有資格者になってしまったワケで、これは業界としても大きな失態だろう。
ただし、もちろんその中にも当然上位合格者もいるし、明らかにヤバかった人はさっさと去っていったので、その世代で今もなお勝ち残っている人は相当洗練された人々だ。
ところで、そもそも何でここでこんなに合格者を増やしたかというと、JーSOX制度と四半期レビュー制度の導入がこのタイミングで人不足が予想されたためだ。
蓋を開けて見たら確かに適用初年度は結構忙しかったみたいだけど、翌年以降は人余りとなったようだ。
それにより合格率を絞り、更に採用まで絞ってきたのだ。
筆者が合格した2011年頃は「就職難民」と呼ばれる「公認会計士試験に合格したけど監査法人に入れない人達」が溢れた。
それまでは公認会計士試験の合格と監査法人への就職はセットという定説があったのだが、1,500人くらいの合格者に対して、その半分程度しか監査法人に就職できないという氷河期が突然到来した。
公認会計士協会が合格者向けに就職イベントを開いたりしていたが、パチ屋の人事が壇上に上がってホール業務の話をし始めた時は空気が凍った。
筆者は社会人経験があったからなのか一度就活を経験していたからかはわからないが、そこでも運良く3大法人は全て内定をもらえたので、中の人と一番雰囲気が合いそうな監査法人を選んだ。
入社が決まってホッとしたのも束の間、衝撃はまだ続いた。
監査法人に入社するや否や、センパイ達への肩叩き大会を見せつけられたのだ。
リーマンショックの後でもあったし、採用を絞ってもなお人が多かったのだろう。
要らない人達がどんどんクビになって去って行くのを見せつけられて、資格取っても安定なんてないんだなぁと実感した。
その後は会計士業界は弁護士業界と並んで「取っても食えない」とマスコミの格好の餌食となり、その後は会計士を目指す人も減ってしまった。
そして、再び会計士業界は深刻な人材不足に悩むこととなる(笑)。
もうどうなんってんだ、これは。
若干話が逸れたが、このように会計士業界はしょっちゅう人繰りに失敗していることがよくわかる。
最近は監査の効率化や一般職や無資格者の活用により人不足も少々改善してきており、完全な売り手市場は終わったようであるが、今後も採用の状況は刻々と変わっていくので、常に「今」の状況を注視して受験するかどうかを決定すべきだろう。
もちろん凄いメリットがある
ここまでの話を聞くと、きっとドン引きしていることだろう。
しかし、こういう状況であることを差し引いても、
会計士試験に合格するメリットは物凄くある。
なんだかんだ物凄い時間をかけて専門的な勉強をするので、監査法人に行こうが行かまいが、会計の「専門家」になれる。
世の中には経理担当者であっても全然会計がわかってない人は沢山いるので、専門家が必要とされる場面は多い。
会計士になれば、専門家として活躍する場はいくらでもある。
別に監査法人で昇進できなかろうがクビになろうが、世の中の会社の数以上に会計業務はあるので食いっぱぐれる事はないし、例えば監査法人の非常勤バイトでも時給6,000円〜8,000円くらい貰えるので、独立してなかなか軌道に乗らなかったりしても餓死する事はないだろう。
留意点
資格は実務経験とセットで価値を生むものである。つまり、会計士試験に合格しても、監査法人等の会計士資格を使う仕事に就職できなければ意味がないと言うことだ。例えば、ずっと資格浪人していて30歳過ぎているけど社会人経験がないとか、社会人経験があるけど40歳で合格して業界未経験だとかだと就職は相当厳しいだろう。
こんなことは一般企業では当たり前だと思うが、別に資格があるからと言ってもそこは同じなので注意してほしい。
経理経験もないという業界未経験でイチからのスタートなら、せいぜい30歳くらいまでに合格しよう。
もちろん最近の人不足の傾向が続けば若くなくても就職できるかもしれないが、いつ再び業界の掌返しが起こるかは予想できない。
どうやって勉強するか
現時点で会計を全く知らなくてもOKだが、予備校は必須
予備校のカリキュラムは初心者からスタートする前提で作られているので事前に会計のことは何も知らなくても大丈夫だ。
筆者も大学で簿記の単位は取ったことがあるものの、簿記3級すら取らずに卒業したので実質初学者だった。
最初は独学も考えたが、市販のテキストでは絶対に対応できないことが直ぐにわかったので断念した。予備校はTAC、大原、LEC、クレアール、CPAと色々とあるが、筆者は大原にした。
理由は、家が遠くて電車通学になるけど通学定期を買えるのは学校法人である大原だけだったからだ。
どこの予備校で学習しても学習内容は殆ど同じなので、筆者と同じように通学定期が使えるとか、家から近いとか、自習室が遅くまで開いているとか、そういうポイントで選んで問題ない。
試験内容は簡単
公認会計士試験は、会計理論や会社法・税法等の「理論科目」と、簿記や税金計算等の「計算科目」で構成されている。
「理論科目」は、根底にある理論を理解し、枝葉の細かい規定を覚えて、適正な処理を判断する能力を問うものだ。
「計算科目」は理論に基づいて構成される会計基準等に従って計算を行うものだ。
「計算科目」というと何か難しいものを想像するかもしれないが、計算そのものは単純で、試験全体として高校レベルの物事の理解があれば十分に対応できる試験であり、実際に高校生合格者もいる。
筆者の経験からしても、勉強内容としては証券アナリスト検定の方がよっぽど難しかった。
では何故公認会計士試験は難関試験だと言われるのか。
それは、勉強量が膨大であるからだ。
筆者は早慶MARCHの大学受験や他の国家資格の合格経験があったので、その延長線上でなんとかなると思っていたが、大学受験なんて全然比にならないくらいの勉強量が必要で愕然とした。
片手間でやると損するだけ
会社で働きながら合格している人も中にはいるようだが、常人にはまず無理だ。
仕事やバイトは辞めて、勉強に専念することを強く勧める。
何故なら、会計士試験は「忘却との戦い」だからだ。
前述の通り、この試験の学習内容はそう難しいものではないが、とにかく学習ボリュームがヤバい。
会計士試験は税理士試験のような丸暗記は殆ど無いので、丸暗記が苦手な筆者としてはそこは良かったのだが、それにしても覚えきれない。
予備校の自習室に初めて行った時、みんなテキストを山のように積んでいて、「なんだこの勉強してますアピールはw」とか「こいつらセンスねーなー」と思ったが、間も無くそれが当たり前なんだと気づいた。
複数ある科目を皿回しの如く同時並行で進めていかなくてはならないからだ。短答で問われないからと言って論文科目の勉強が疎かなら、短答に合格しても次の論文で合格できない。
これで、「仕事で繁忙期だから今は勉強ができない!」なんてやっていたら、あっという間に知識はズルズル抜けていってしまう。
そしてまた忘却した知識を元に戻すのに大量の時間を使うので、超非効率的だ。
また、試験制度自体によってスタート地点に戻されるリスクがある。
会計士試験は例え短答式に合格しても、3年以内に論文式に合格しないと再度短答式試験からチャレンジすることになる。
つまり、短答式合格がパーになるということだ。
一般的にはここで撤退を決意する人が多いが、それでも続ける超人もいる。
予備校には「ヌシ」とか「ベテ(ベテラン)」と呼ばれる人達がおり、中途半端に試験を目指していつまでも短答合格しなかったり、三振して降り出しから勉強しており、10年選手もいる。
ペーパー試験なんて限定的な範囲の形式的な学習なので、よっぽどの変人では無い限り通常1〜2年で飽きる。
片手間でやっていると、もう辞めたいけど何年も勉強してしまったし何百万円も使ってしまったから辞めるに辞められないという地獄のような状態になるので、集中して時間が取れそうも無いなら目指さない方が良いだろう。
論文式試験まで毎日休まず勉強することが大切
せっかくやった勉強をパーにしないためには、とにかく「毎日」休まず勉強することが大切だ。
1日8時間くらいは勉強だけに集中出来る環境を作るべきだ。
出来れば10時間〜12時間くらい確保できると良い。
これを論文式の試験日まで休まずに続ける。
合格に必要な時間はTACによれば概ね2,000時間から5,000時間だそうだ。
一発合格者の平均時間は3,664時間とのことで、まさに筆者の勉強時間はドンピシャだった。
注意して欲しいのは、これは合格者の平均であって、この裏側にはこれよりよっぽど時間をかけても合格できない不合格者のほうが沢山いるということだ。
予備校には何万時間やっても合格できないベテもいる。
1年間毎日10時間勉強したとすると、3,650時間だ。
TACの言う通り合格者の平均勉強時間が多くても5,000時間程度だとすると、長期間勉強していた人は合格することなく撤退してしまっているということだろう。
丸々1年勉強し続けるという生活が何年も続くわけがない。
とにかく大切なのは、間を空けることなく毎日8時間〜12時間くらい勉強し続けること。
公認会計士試験はこれさえできれば合格できる。
合格とその後
資格の使い道
今はもう公認会計士としての業務は行っていないが、会計士資格のおかげで今もかなり稼がせてもらっている。
新卒カードを無駄にしてしまったマイナスを埋めるほどでは無いだろうが、筆者にとってはかなり割りの良い「敗者復活戦」だった。資格の価値なんて昔ほど無いだろうけど、前述のように、この資格があるだけでかなりの幅を持った転職ができるし、バイトでも時給1万円近く貰えたりするので、公認会計士試験に合格すれば安泰とまでは言えないものの、このご時世においても「食いっぱぐれない」可能性は高いだろう。
なんか合格できそうな気がしてきた!
景気も悪くなりそうだし、ウチの会社の業績も悪いし、リアルに難関資格取るのもアリかもしんないっスね・・・
いやー!今からお金貯めておかないと!
コメント
コメント一覧 (4件)
慶應が中間とかこいつ頭大丈夫か?
京大阪大より人気の超一流大学なんすけどw
司法試験も1位やし
コメントありがとうございます。
阪大も素敵ですよ。
はじめまして。
ブログ読ませていただきました。
私は昨年より公認会計士講座を受講しはじめたのですが、例えばB/S、P/Lの書き方を覚えたと思ったら間違えたり、その他勉強しても頭に残らず、そんな自分が嫌になって勉強をやめてしまっている状態です。
問題集を回転させてやっていくしかないのかもしれませんが、やっているそばからほとんど忘れていってしまうので、そもそも自分には向いてないんじゃないかなと思ってしまいました。
ブログ主さんが受験生時代に、勉強する中で意識していたことがあれば、公認会計士試験に限らず教えていただきたいです。
よろしくお願いします。
コメントありがとうございます!
優秀に見える人もほとんど皆その状態なので心配無用です。
意味がわからないながらも量をこなさないといけないのが簿記学習の最も大きなストレスの一つですが、高度に抽象的な学問なのでそういうものだと諦めるしかないと思います。
学習している中で理解できるものもあれば、実務に就いてようやく理解できるものもあります。
また、記憶のインプット・維持をするために必要な勉強量は想像を遥かに超えており、大学受験なんて比にならない印象でした。
合格するためにはとんでもない量の勉強をしないといけないので、どのようにモチベーションを維持するかがカギだと思います。
筆者の場合は新卒で仕事を辞めた上でチャレンジしていて、1回で合格できなければ撤退しなければならないという追い詰められた環境だったことが一番の成功要因でした。
それでも毎日終日勉強なのでサボりたくなるので、他人の目に晒されている自習室に終日こもるという工夫をしていました。
合格までは本当に長い道のりですが、受験する価値がある資格だと思いますので、応援しております!