当期純利益の概念が変わったことにまだ気づいていない人へ

当期純利益の概念については2013年(平成25年)改正で変更されている。

とっくの昔のことなのに、未だに気づいていない人も少なくないのではないか。

筆者がM&A案件で一緒に仕事したFA(ファイナンシャルアドバイザー)のマネジャーを務めていた公認会計士も「えっ、今そんな感じでしたっけ?」という反応だったので、昔勉強したっきりの人はアップデートできていないこともあるようだ。

ここ数年で簿記の勉強を始めた人にしてみれば、逆になんのこっちゃ!?というところだろうが、未だに少数株主持分(ショウモチ)、少数株主損益(ショウソン)なんてワードを使う人はもしかしたら古い知識のままアップデートされていないかもしれないので、一旦確認してみよう。

目次

当期純利益ってなんだったっけ?

純利益の定義については、ASBJにより2006年に公表された財務会計の概念フレームワークの第3章9項にある。

9.純利益とは、特定期間の期末までに生じた純資産の変動額(報告主体の所有者である株主、子会社の少数株主、及び前項にいうオプションの所有者との直接的な取引による部分を除く。)のうち、その期間中にリスクから解放された投資の成果であって、報告主体の所有者に帰属する部分をいう。

なんともわかりづらいが、正確さを捨てて簡単に言えば、

①過年度に実現していなくて当期に実現した親会社に帰属する利益
②当期に生じて実現した親会社に帰属する利益

を足したものだ。

過年度に実現していなかった利益というのは、例えば有価証券の評価差額などで、親会社に帰属しない利益というのは、少数株主に帰属する利益を指す。

概念フレームワークでは難解に定義されているが、結局は昔からのイメージ通りでしっくり来たのではないか。

しかし何かがおかしい。

そう、この定義は2013年改正前の当期純利益であるのだ。

連結会計基準上の当期純利益

連結財務諸表に関する会計基準(以下、連結会計基準)の51-3において下記のような記載がある。

51-3. また、平成21年論点整理へのコメントや当委員会の審議において、国際的な会計基準と同様に連結財務諸表の表示を行うことにより比較可能性の向上を図るべきとの意見が多くみられたことを踏まえて検討を行った結果、平成 25 年改正会計基準では、当期純利益には非支配株主に帰属する部分も含めることとした(第 39 項(3)2参照)。

国際的な動向に合わせろって意見が多いから、これからは当期純利益の中に少数株主損益も入れちゃおう!ということである。

この背景には面倒くさい議論がある。

連結財務諸表の作り方については、親会社の立場として連結財務諸表を作るべきと考える「親会社説」と、企業集団一体として財務諸表を作るべきと考える「経済的単一体説」があって、どっちが正しいというわけではない。

今の会計基準がどうなっているのかと言うと、基本的に親会社説だけど部分的に経済的単一説の立場で作成した方が意味のある開示だよね!というところはそうしているという「ちぐはぐ」な状態なのである。

(参考)ショウモチはなぜヒシモチになったのか

これは大した話ではないが、ショウモチで勉強してきた身としてはヒシモチと言うのは非常に気持ちが悪い。古い会計士は口頭のコミュニケーション上では未だにショウモチと呼んでいたりもする。

さて、この名称変更の理由は連結会計基準55-2に記載されている。

55-2.平成25年改正会計基準では、少数株主持分を非支配株主持分に変更することとした(第26項参照)。これは、他の企業の議決権の過半数を所有していない株主であっても他の会社を支配し親会社となることがあり得るため、より正確な表現とするためである。これに合わせて、少数株主損益を、非支配株主に帰属する当期純利益に変更することとした。

少数株主でも他の判定項目を含めて考えたら支配株主になることもあるので表現がイマイチだから変えました!ということだ。

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