その字面だけでもそこはかとなくつまらなそうな雰囲気を醸し出している簿記。
そもそも簿記って何のためにやるんじゃい!って思わないだろうか?
それも知らないまま無理やりやらされるから余計につまんないんだな。
とりあえずそこから押さえに行こうか。
簿記は何のためにやるのか?
ハンバーガー屋の例
まず、簿記の必要性について説明するために、君がハンバーガー屋で起業したと仮定して考えてみよう。
画期的な新しいハンバーガーを考えた君は、ハンバーガーショップを作ることにした。
だが、君の手持ち資金はすっからかん。
なので、お金を持ってる人に起業するための元手を出してもらうことにした。
元手を出す人も2種類いて、金を貸してあげる人(債権者)と、出資する人、つまり会社のオーナー(株主)がいる。
債権者に対しては、借入金の元本の返済と元本に対する利息の支払いを行う必要がある。
株主は会社のオーナーなので、利益が溜まってきたら配当金を得たり、株主総会で会社の重要事項を決定したりする。
意外かもしれないが、経営者はあくまでも株主に雇われた経営を代行する人に過ぎない。
銀行に1,000万貸してもらって銀行は債権者となり、君のおじいちゃんが1,000万出資してくれておじいちゃんはオーナーになることになった。
君は経営者として、これらの人から金を預かって、その金を使ってビジネスを行う。
まずはハンバーガーを製造するための調理器具に1,000万円投資した。
そして、仕入に500万円かかって、家賃と水道光熱費に300万円かかった。
バイトを雇う余裕はないから、自分一人で働いて、給料(役員報酬)は200万円もらった。
売上は2,000万円だった。
1年経って、銀行とおじいちゃんが、君に聞きに来た。
いくら儲かったの?
簿記がわからない君は、手元にある2,000万円を見て、1円も増えていないことに気づく。
ヤバい、1年しっかり頑張ったのに、1円も儲かっていないじゃん・・・と憔悴する。
一方、簿記がわかるおじいちゃんは、数日で財務諸表を作り上げ、銀行の担当者と共にこりゃ儲かってるねぇと安堵する。
簿記がわからないとどうなるか
この話からわかるように、簿記がわからないと経営が出来ない。
どんだけ儲かったかすらわかんない社長とかクソヤバいでしょ。
上記の例の種明かしをすると、調理器具は何年も使えるから一発で費用になるわけではなくて、例えば10年使えるなら1年の費用は100万円になるわけ。
理解のために簡便的に説明するため、原価の材料費以外と税金を無視しているけど、損益計算書はこんな感じになる。
- 売上高 2,000万円
- 仕入(売上原価)500万円
- 減価償却費 100万円
- 家賃・水光熱費 300万円
- 役員報酬 200万円
- 利益 900万円
めっちゃ儲かってる!
ちなみに貸借対照表はこんな感じ。
- 現金預金 2,000万円
- 機械装置 900万円
- 借入金 1,000万円
- 資本金 1,000万円
- 利益剰余金 900万円
これをいきなり書かれても何だこれ?って感じだと思うけど、今はそれで全然大丈夫だ。徐々に勉強して行こう。
とにかくまあ、こうやって1年通してどうなったのかを測定・記録する必要があるんだ。
どうやって計算したら良いのか
簿記が大事なのはわかったけど、簿記ってどうやったらいいんだ!っていう疑問を持つだろう。
参考書を開くと、いきなり仕訳が書いてあって、最後まで仕訳を覚えさせられる。
何でこうなるわけ?全然意味がわからん。
正常な人ならそう思うだろう。
簿記のやり方のルールはASBJ(企業会計基準委員会)という団体が作っている。
それがいわゆる「会計基準」というものだ。
会計基準には「こうやって仕訳を切るべし!」という事と、「何でこうやって仕訳を切ることにしたか」という背景が書いてある。
市販の参考書はそれをすっとばして借方はこう、貸方はこうだと書いてそれを丸暗記することを強要している。
だから簿記はつまらないと感じる人が多いんだな。
まあ、別に理屈がわかったところで楽しくはないけどな。
ちなみに、日本の簿記の最初のルールは1949年に定められた「企業会計原則」というもので、これもまだ生きているルールだ。
そのルールを作るときに公表された文書が下記のものだ。
何言っているのかは後で書くので、とりあえずスクロールして欲しい。
企業会計原則の設定について
http://www.obenet.jp/RULES/ACRULE01.html
(昭和二十四年七月九日 経済安定本部企業会計制度対策調査会中間報告)
(目的)
一 我が国の企業会計制度は、欧米のそれに比較して改善の余地が多く、且つ、甚しく不統一であるため、企業の財政状態並びに経営成績を正確に把握することが困難な実情にある。我が国企業の健全な進歩発達のためにも、社会全体の利益のためにも、その弊害は速かに改められなければならない。
又、我が国経済再建上当面の課題である外資の導入、企業の合理化、課税の公正化、証券投資の民主化、産業金融の適正化等の合理的な解決のためにも、企業会計制度の改善統一は緊急を要する問題である。
仍って、企業会計の基準を確立し、維持するため、先ず企業会計原則を設定して、我が国国民経済の民主的で健全な発達のための科学的基礎を与えようとするものである。
(会計原則)
ニ 1 企業会計原則は、企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当って従わなければならない基準である。
2 企業会計原則は、公認会計士が、公認会計士法及び証券取引法に基き財務諸表の監査をなす場合において従わなければならない基準となる。
3 企業会計原則は、将来において、商法、税法、物価統制令等の企業会計に関係ある諸法令が制定改廃される場合において尊重されなければならないものである。
(財務諸表の体系)
三 企業会計原則に従って作成される財務諸表の体系は、次の通りである。
損益計算書
剰余金計算書
剰余金処分計算書
貸借対照表
財務諸表付属明細表
(注) 現行商法の規定に基き、財産目録を作成する必要ある場合は、この原則に準じて作成するものとする。
(財務諸表準則)
四 財務諸表準則は、企業会計原則を適用した場合における財務諸表の標準様式及び作成方法を定めたものである。
簡単に言うと、こんな感じ。
日本の会計制度がしっかり出来てないから、みんなやり方がバラバラだし間違ってたりしてクソです。だからちゃんとした制度を作ります。
ちゃんとしてないと外資が日本企業の価値怪しくて買いに来ないし、企業経営で偉い人が判断材料に使う資料が間違ってて経営失敗するし、税金計算間違えるし、金融業の民営化や合理化が進まないぜ!
だからちゃんとしたルールを作りたいんだ!
簿記のやり方は社会で色んな会社が色んな方法でやってきたけど、イイ感じのやり方をまとめるとこんな感じだよな、だからみんなで統一的にこのルールでやろうぜ!
そしてそのルールは財務諸表を作るときに使うのみならず、その財務諸表が合ってるかどうかを会計士が判断するときにも使うものだぜ!
こんな感じ。
最初はぐちゃぐちゃでクソだったから、先の例でいうハンバーガー屋みたいに管理できてない状況だったんだな。
簿記をやって、結果どうするのか
簿記で計算した結果は、元手を出した人たちに見せてあげる必要がある。
だって金出した人が、自分が出した金がどうなってるのか分からなかったら、もう誰も金出さないっしょ。
先の例だと銀行とおじいちゃんに報告しないといけないわけだ。
あんた達から預かった金を使って1年間ビジネスをやったらこんだけ儲かったんだぜ!という報告をする。
それを財務報告という。
つまり、「財務報告をするための計算のやり方」が簿記ってことだな。
財務報告は何のためにやるのか?
財務報告って何のためにするのか?
簡単に言うと上述のように、ちゃんと報告してくれないと誰も金出してくれないじゃんってことなんだけど、ASBJが討議資料「財務会計の概念フレームワーク」(2006年12月28日)の中で、財務報告の目的について述べているので触れておく。
下記に財務報告の目的をコピペするけど、適当に読み飛ばして欲しい。
【本 文】 〔ディスクロージャー制度と財務報告の目的〕
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/begriff_20061228.pdf
1.企業の将来を予測するうえで、企業の現状に関する情報は不可欠であるが、その情報を入手する 機会について、投資家と経営者の間には一般に大きな格差がある。このような状況のもとで、情報 開示が不十分にしか行われないと、企業の発行する株式や社債などの価値を推定する際に投資家が 自己責任を負うことはできず、それらの証券の円滑な発行・流通が妨げられることにもなる。そう した情報の非対称性を緩和し、それが生み出す市場の機能障害を解決するため、経営者による私的 情報の開示を促進するのがディスクロージャー制度の存在意義である。
2.投資家は不確実な将来キャッシュフローへの期待のもとに、自らの意思で自己の資金を企業に投 下する。その不確実な成果を予測して意思決定をする際、投資家は企業が資金をどのように投資し、 実際にどれだけの成果をあげているかについての情報を必要としている。経営者に開示が求められ るのは、基本的にはこうした情報である。財務報告の目的は、投資家の意思決定に資するディスク ロージャー制度の一環として、投資のポジション(1)とその成果を測定して開示することである。
3. 財務報告において提供される情報の中で、投資の成果を示す利益情報は基本的に過去の成果を表 すが、企業価値評価の基礎となる将来キャッシュフローの予測に広く用いられている。このように 利益の情報を利用することは、同時に、利益を生み出す投資のストックの情報を利用することも含 意している。投資の成果の絶対的な大きさのみならず、それを生み出す投資のストックと比較した 収益性(あるいは効率性)も重視されるからである。
簡単に言うとこういうこと。
俺らが会社の株を買うときに、その会社が儲かってるのか、過去の儲けの蓄えは十分なのかとかを見たいけど、会社の経営者と俺らの間では持ってる情報の量も質も全然違う。
俺らは株で損したら自己責任っていうルールでやってるんだから、経営者は会社の状況をちゃんと示してくれないと俺らが株買わなくなっちゃう。だからちゃんと開示させるようにするわ。
俺らが株を買うとその金で会社が事業に投資するわけだが、その事業が結果どうなったのかを正確に計算してみんなにお知らせするようにするわ。
利益がいくら出ているかだけじゃなくて、どれだけの金を使ってどれくらい利益が出ているのかもわかるようにするわ。
要は、ちゃんとした正しい簿記で作った財務諸表をベースに報告しろよ、じゃないと誰も投資しなくなるじゃん、ということだな。
まとめ
こんな感じで、財務諸表の作成と報告がセットで社会的な機能を持っているということが言える。
その作成の前提が簿記なんだ。
簿記をちゃんとやんないと、会社がどんだけ儲かってるのか、儲けた蓄えがどんだけ残ってるのかわかんない。
で、ちゃんと計算したとしてもそれを金出した人にちゃんと報告してくれないと誰も金出してくれなくなる。
そうなると日本経済がちゃんと回らなくなって困る!だからちゃんとやろうぜ!ってことだな。
そういう前提を無視して勉強しても何も身につかないし、全然楽しくないと思うので、この記事を何回か読み返したり、同じことを言っているような本を読んだりして、何のためにやるのかというイメージを膨らませて欲しい。
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