この記事の目的
失敗プロジェクトの事例を理解しよう!
注意点
当記事は投資の勧誘を行う目的ではなく、投資の成果を保証するものではない。また、不正確な情報は随時更新する予定であるが、執筆時点で入手可能な情報をもとに筆者が解釈したものであり、情報の正確性を保証するものではない。
筆者の狙い
始まったばかりのサービスであるnyacashのガバナンストークンNYASの価格上昇に期待して投資してみた。
nyacashのトークン配布が当記事の執筆日である2021/2/7に始まった。
ボードルームは10日後の2021/2/17に開始(シニョリッジはその24時間以内)する。
今回は出来立ての当該サービスを理解してみよう。
なお、BSC(Binance Smart Chain , バイナンススマートチェーン)の利用が初めての場合、DeFiの前提知識やメタマスクの設定が必要となるため、以下のパンケーキスワップ(pancakeswap)の記事から読むことをオススメする。
なお、この分野について普段から慣れ親しんでいない人は読んでていて全然意味がわからないかもしれないが、頭の良し悪しではなく完全に慣れの問題である。上記の記事の内容をウォークスルー(実際にやってみる)ことにより自然とDeFiを利用する能力が身につくので、少額で良いので試してみると良いだろう。
nyacashとは?
nyacashとは、nyanswop(ニャンスウォップ)が運営するプロジェクトで、簡単にどのようなサービスかと言うと、NYACというトークンをUSD(米ドル)にペッグする目的で運用するものである。
つまり、1USD=1NYACになるように調整し続けるというものだ。
このようなトークンの価格を何らかの価格にペッグして、安定した価格を維持するものをステーブルコインと呼ぶ。
NYACの価格が1USD付近に安定することで、投資家は暗号資産(仮想通貨)からNYACに持ち替えれば価格変動リスクから逃れることができる。
「1NYAC=1USDに維持されるように調整されるのであれ、NYACを買っても儲からないじゃないか!」と思った人は正解で、1USDで1NYACを買ってもほとんど儲かることはないだろう。
NYACがステーブルであるために使われるNYASとNYABに投資することで儲かる可能性がある。
その理屈は以下を読み進めて行くうちに理解できる。
なお、最近のBSC上のプロジェクト「あるある」であるが、これもまた有名プロジェクトのフォーク(コピー)である。
nyacashはBasis Cash(ベーシスキャッシュ)のフォークであり、nyanswopのAMMによりサポートされたアルゴリズムによってサポートされたステーブルコインを発行している。
このような無担保で価格を維持するトークンをアルゴリズミックステーブルコイン(Algorithmic Stablecoin)と呼ぶ。
Basis Cashとは?
nyacashはBasis Cashのフォークなので、まずはBasis Cashがどのようなものなのかについて見てみよう。
docsは以下のリンク先にある。
以下に簡単に解釈した概要をまとめる。
トークンの概要
Basis Cashは以下の3種類のトークンを複合的に運用することで、BACの価格を1USDにペッグすることを実現する仕組みになっている。
- Basis Cash(BAC):1USDにペッグすることを目指したトークン。供給量をBASのシニョリッジ配当により間接的に調整することで価格が安定する。
- Basis Share(BAS):Basis Cashにおけるガバナンストークン(株式のような役割を果たすトークン)である。ボードルームにBASをステークすることでシニョリッジが得られる権利が付されており、トークン価格は固定されていない。BACの流動性が高まるとシニョリッジが発生する機会が増えるので、価値が高まる。
- Basis Bond(BAB):債券の役割を果たすトークン。1BAC<1DAI(すなわち、おおむね1USDを下回った場合)に発行される。1BACで1BABを購入することができる。BABの購入に充てられたBACはバーン(Burn)されるので、BACの流通量が減少し、価格上昇方向に向かう。その後、BACが1USDを超えたときに償還請求をすると、1BACに引き換えることができる。例えば、1BACが0.9USDになった場合に1BACで1BABを購入し、BAC価格が0.9USDから1USDに戻った場合には0.1USDの利益となる。なお、BABの償還はトレジャリーにより自動的に行われる。
なお、シニョリッジとはトークンの発行益のことである。ここでは発行された枚数×時価(1USD)がシニョリッジとなる。トレジャリーはBACの価格が下落したときにBACの買い戻しを行うための基金である。
なぜ価格が安定するのか?
24時間ごとにUniswapのBACの価格がDAIの価格に比べてε%上下していないかどうかを自動的に確認し、超えている場合には調整が行われる。
BAC>(1+ε)DAIの場合(BACがおおむね1USDよりも高い場合)は新しいBACをミント(発行する)。新しいBACがミントされることでBACの価格が下落し、1USDに戻る仕組みになっている。
BAC<(1+ε)DAIの場合(BACがおおむね1USDよりも低い場合)は前述のようにBABが発行される。BABの発行により得られた資金によりBACの買い戻しが行われ、1USDに戻る仕組みになっている。
なお、シニョリッジについてはすべてのBABを償還したうえで余剰があった場合にボードルームに配分される。
このようにBasis Cashは3つのトークンの関係性により価格維持を目標としているが、アルゴリズミックステーブルコインも種類によってアルゴリズムは様々で、シンプルに1つのトークンで価格の安定を目指すAmpleforth(アンプルフォース)のようなものもある。
では、nyacashの本家であるBasis Cashはステーブルコインとして成立しているかというと、現状は成立していない。執筆時点では概ね0.5ドル弱を推移している。
ローンチからまだ2か月少々というところなのでまだこの先どうなるかはわからないが、このままBondの需要がなければシュリンクしてしまう可能性もあるだろう。
いずれにせよ先の長い投資になることが想定される。
この点をしっかり理解したうえで投資したいところだ。
nyacash
nyacashの概要は以下にまとめられている。
前述のとおりBasis Cashのフォークなので、構造はBasis Cashと概ね同じである。
トークンは以下の対応関係になっている。
- BAC→NYAC(nyacash , ニャーキャッシュ)
- BAS→NYAS(nyashare , ニャーシェア)
- BAB→NYAB(nyabond , ニャーボンド)
なお、シニョリッジ時間は6時間とBasis Cashに比べて短い。
また、NYAB購入時にはNYACとセットで購入し、当該NYACはBurn(バーン)されるとのことである。
まとめると、以下のようなアルゴリズムになると考えられる。
NYASを買ってみた
今後のnyacashのプロジェクトの拡大を期待してNYASを購入してみた。
バイナンスコインの購入はバイナンスがオススメだ。下記リンクからバイナンスに登録するとキックバック報酬が得られる(コミッションレート10%)。
NYASはnyanswopで購入することができる。
SwapのToからNYASを選択する。
これでNYASの入手は完了だ。
ただ持っているのももったいないので、イールドファーミング(流動性マイニング)もしておこう。
持っているNYASを同価値分のUSDTとセットでnyanswopに流動性供給する。
もちろんLPトークンもステークしておく。
NYAS-USDT NYAN-LPのAPR(Annual Percentage Rate , 単利の年利)は1,500%なので、1日4%くらいの利息が得られる計算だ。
実際にステークすると以下のようになる。
当初の投資戦略のあり方
nyacashのトケノミクス(tokenomics , トークンの経済学)については、公式のMedium(ブログ記事)を参照してほしい。
なお、トケノミクスやイールドファーミング(流動性マイニング)の概念についてわからなくなった場合は、冒頭で紹介した以下の記事を見返してほしい。
まず、NYASの総供給量は1,000,000 NYASである。
その内訳として、NYAC-USDT NYAN-LPプールにおいて初期報酬率が高い600,000 NYASを配布する。配布枚数は30日ごとに25%減少する。
次に、NYAS-USDT NYAN-LPプールは一定のレートで300,000NYASを配布する。
最後に、残りの100,000 NYASがプロジェクト側に割り当てられる。
こうやって見ると、NYAC-USDTプールに流動性供給を行なった方が得するように思える。
しかし、注意したい点は、NYACの価格は執筆時点で20USD超となっている。これはNYACの追加発行(シニョリッジ)が未実施であるためである。
シニョリッジによりNYACの価格は1USDに近似するものと考えられるが、合理的な投資家はシニョリッジの開始を見越してNYACの売りを入れてくるであろうから、ある時点を境にNYACの価格は1USDに近づくものと考えられる。
つまり、NYASを得られるレートが高いからと思って今のレートでNYACを買い、最後に1NYACを 1USDで売却することとなると得たNYASよりもNYACの売却損が上回る可能性がある点には注意されたい。
また、もしNYACの価格がこのまま推移してシニョリッジにより価格調整が行われるとなると、初回のシニョリッジを得られるボードルームの参加者は、大きなリターンを得られるかもしれない。
投資後の動き
2021/2/10追記
ロック総額は17MUSD強まで積みあがった後、減少傾向にある。それに伴い、nyacashとnyashareの時価が下落している。nyashareの価値を強調する目的なのか、表示がTotal Supply(総発行量)からCirculating Supply(循環量)の表示に変更された。
nyacashプロジェクトの価値の上昇は、先を行く本家のBasis Cashの価格が1USDに安定化することがトリガーとなると考えられる。
ボードルームオープンと同時に破綻
2020/2/17の日本時間午前9時にボードルームがオープンした。
オープン前後の様子をレポートする。
オープン前。NYACやNYASの価格もかなり戻している。
LPトークンは1割くらい育っている。
POOLしているLPトークンも引き出す。
結局たったの27弱のNYASにしかならなかったが、ボードルームにステークしてみる。
大事故の発生
9時を迎えると、94,035USD分のNYACが入っていた。
USDに対してステーブルであれば1,000万円程度の金額なので、十数万円の投資額に対してなんとも破壊的な収益率だ。一体どうなっているのか。
しかし、もちろんそううまいこと行かず、NYACの金額はとたんに暴落してしまった。
この時点では、流れとしては初回のエポックではNYACが1USDを超えていたのでシニョリッジが発生し、1USDになったものの、途端に利益確定売りが出て大幅にNYACとNYASが暴落したものと理解した(本当の理由は後ほど)。
この時点でNYABは未発行であるので単価がおかしなことになっている。
その後、NYABの発行が突然開始した。
NYACの発行枚数が異常なため、異常な利回りとなっている。
また、NYABのレートが(NYAC)^2ってやり過ぎなんじゃないか?このレートで発行したらとんでもない量のNYABが積みあがるのではないだろうか。
予想通り、いくらNYABを発行しても一向にNYACの価格にインパクトしていない。
うーん、やっぱり何かがおかしい。
そう思う間にもどんどんロック金額は減少してゆく。
しばらくすると、公式からテレグラムが送られてきた。
やっぱり最初のシニョリッジで失敗していたようだ。配布された枚数が異常に多かった。
これについて、運営が「やっちまった」のか、攻撃されたのかもわからないようだ。
公式でNYACの部分的な買い戻しを行ったこと、NYACとNYAの価格の回復に最善を尽くすこと、NYABの購入者に対してインセンティブを与える計画があることが記載されている。
ここから回復するには運営が大きくNYACを買い戻すくらいしか方法がないんじゃないかと思う。
運営からしてもせっかく育て上げたnyanswopがnyacashのローンチによって壊滅するのを指をくわえて見ているということはないだろうから、何かしらの対応はするのだろうと考えられる。
その後のミディアムの投稿を見ると、どうやら初回のシニョリッジの割当中に参照するオラクルのNYAC価格が100倍の価格になっていたようだ。
これによりハイパーインフレ状態となってしまった。
救済策の発表
2021/2/21に救済策の発表が行われた。
nya.cashの各トークン(NYAC,NYAS,NYAB)をnyanswopでステークすることによりNYA(nyanswopのガバナンストークン)が得られるプールが開設された。
この時点ではAPYも不明でどれだけの救済になるのかもわからないが、カネは出せないのでNYAのダイリューションでカバーしようという発想である。
要するに、既存NYA保有者にnya.cashの失敗を負担させることになった。
プロジェクトに全然カネがないためこうなったものと推察するが、カネがあってこうしているのであれば、トークン価格の形成能力に疑念が生じざるを得ない。
本体のnyanswopを巻き込んで破綻
2021/3/24の21時過ぎに、突然のnyanswopのサポート終了のお知らせが届いた。
Mediumには言い訳がつらつらと書いてあるが、要は運営能力がなかったのだ。
別のプロジェクトをコピーして貼り付けることはできるが、セキュリティ対策など、必要とされている対応ができなかったということだ。
若しくは被害者を装って、自ら使い込んでいるのかもしれない。
このお知らせは丁度NYACなどのステーキングによるNYAトークンのpoolの期限の到達のタイミングで送られてきたので、もはや計画的だったのだろう。
ステーキングすることもwithdrawをすることでもガスはかかるので、さすがにこの対応には運営側の悪意を感じる。
暗号資産取引はDYOR(Do Your Own Research)、つまり自分で調べろという原則が通例となっているが、さすがにラグプル(Rug pull)まで見通すことは難しいだろう。
予想通りnyanswopもろとも巻き込んですべて無に帰すという、結果だけ見るととんでもないSCAMプロジェクトであった。ラグプルに本格的に巻き込まれたのは初めてで、ある意味勉強になった。
このワンショットで30万円以上持っていかれており、大きな損失ではないものの、この分の損失が他の投資の含み益と相殺されていると思うと残念でならない。
突然のPolloによる救済策の発表
すべてがコレで終わったかと思われたが、2021/3/25にPolloからnya.cashでラグプルを食らった利用者に対しての支援が発表された。
Polloチームはnyanswopチームに対する敬意を表してnya.cashで損失を被った人々(最大814アドレス)に対して4,000PDOが配布されることになった。
これに参加するためには、以下のリンクにウォレットアドレスを送信する必要がある(締め切りは3/31 23:59(UTC + 0))。
これが慈善行為としておこなわれている面もあるだろうが、もちろん経済合理性があってのことだと考えられる。
かつてSBFがSushiSwapを救済して流動性を獲得したように、nya.cash参加者を取り込むことによってPolloの利用度を高めるというマーケティング的な側面もあるだろう。
PolloのUIはPancakeSwap(パンケーキスワップ)そのものであり、最近量産されているフォークプロジェクトの1つであるが、しっかりWhitepaper(ホワイトペーパー)、Roadmap(ロードマップ)を公開しているので、興味があれば参照してみてほしい。
バイナンスコインの購入はバイナンスがオススメ!下記リンクからバイナンスに登録するとキックバック報酬が得られる(コミッションレート10%)。
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